転写配列から見たトポイソメラーゼ(topoisomerase)

 11月1日の日経産業新聞に、中外製薬がトポイソメラーゼⅠという酵素の阻害剤を抗がん剤として開発し、英国で治験に入ったという記事が掲載されていました。すでに既存のトポイソメラーザⅠの阻害剤が抗がん剤として世に出回っているのですが、それよりも、中外製薬の開発した薬剤のほうが、ガン特異性が高く、副作用も少ないと書いてありました。さて、このトポイソメラーゼとは、どのような転写産物を持っているのでしょう。

トポイソメラーザとは

このトポイソメラーゼⅠというのは、細胞内でどういう役割を果たしているのかインターネットで調べてみました。

ということで、DNAの二重らせん構造の矛盾を修復する酵素なので、こいつの活性を阻害してやったら、確かに細胞の増殖時のDNAの複製がうまくいかず、細胞の増殖が抑えられるという抗がん作用につながるということなのですね。なるほど・・・(しかしながら、正常な細胞の増殖もおさえちゃうから、できれば、ガン細胞にだけ集まるようにする仕組みがついていて欲しいですね)

どんな種類のトポイソメラーザがあるかというと

Ⅰ型とⅢ型が、片方のDNAを切るタイプで、Ⅱ型が両方のDNAを切るタイプだそうです。Ⅰ型はモノマーですが、Ⅱ型とⅢ型は、ダイマー(つまり、ふたつが合体して機能を有している)だそうです。

UniGeneTitleの文字列にtopoisomeraseで検索をかけてみると・・・

全部で18個のUniGeneClusterがヒットしました。(ヒトUniGeneBuild#181)その中で、蛋白質コード領域が登録されている配列を持つ転写産物クラスタだけをリストしました。

  1. Hs.53454 Topoisomerase (DNA) II binding protein 1 q22.1 TOPBP1
  2. Hs.156346 Topoisomerase (DNA) II alpha 170kDa q21-q22 TOP2A
  3. Hs.381281 Topoisomerase (DNA) I pseudogene 2 q11.2-q13.1 TOP1P2
  4. Hs.386502 Topoisomerase (DNA) I pseudogene 1 q23-q25 FMO4
  5. Hs.435124 Topoisomerase (DNA) III alpha p12-p11.2 TOP3A
  6. Hs.436401 Topoisomerase (DNA) III beta q11.22 TOP3B
  7. Hs.472737 Topoisomerase (DNA) I q12-q13.1 TOP1
  8. Hs.475733 Topoisomerase (DNA) II beta 180kDa p24 TOP2B
  9. Hs.528574 Topoisomerase (DNA) I, mitochondrial q24.3 TOP1MT
  10. Hs.535961 Topoisomerase I binding, arginine/serine-rich p21 TOPORS

Hs.472737 Topoisomerase (DNA) I TOP1 の転写産物のゲノムマップの様子は

図1が、TOP1のゲノムマップの様子です。図2は、エキソンイントロン構造を持つ転写産物だけにしてみました。
この遺伝子にも、いろいろなスプライシングバリアントが存在し、また、イントロンに落ちるような転写産物、なぜか逆向きにマップされる転写産物などなど、遺伝子領域全般にわたって転写の痕跡がみられますね。


図1:TOP1のゲノムマップの様子 全体像

図2:TOP1のゲノムマップの様子 Exon-Intron構造を持った転写産物のみ