第2回オミックス医療シンポジウム/第3回ゲノム医療情報シンポジウム

 横浜まで湘南新宿ラインで30分弱、便利になりました。横浜パシフィコのアネックスで開かれていたのですが、なかなか盛況でした。一昨日、non-codingRNAのセミナーにいってきて、RNAワールドの話を聞いてきたので、先生や企業の方々のプレセンテーションがあらためてよく理解できたようなところがあって、そこの点が自分自身で面白かったです。
 具体的には、東京医科大学の西村先生で、”発現頻度の低い蛋白が見えないと本物が捕まえられない”というお話で、高発現の蛋白質を見ているのを宇宙から地球を見るスケールで置き換えると、低発現で変動している蛋白質は、地球上の花のひとつひとつを見分けるようなものだとおっしゃていたことが印象的でした。つまり、低発現の蛋白を見ることが必要・・・私たちもプロテオーム用のアミノ酸配列製品を出していますので気になるのですが、一昨日のnon-codingRNAのセミナーでお聞きした、ncRNAが低発現であるけれどかなりの数あってそれらが100アミノ酸以下のペプチドの合成情報を持っているのではないかという仮説を思い出してしまいました。配列を扱うものとして、低発現の蛋白が、今データベースの中にどれほどあるのだろうか・・・気になってきました。これまでの研究では、おおざっぱに素人の立場ていってしまうと高発現の蛋白質を中心にして機能解析されてきたのかもしれませんね。そうすると、低発現の蛋白質を取っていこうという話はなかなかなかったのかもしれません。
 また、東京医科歯科大学の松村先生のお話の中で、生活習慣病やガンになりやすい遺伝子情報をゲノム上に持ったひとでも、”ゲノムが原因で病気になるわけではない”というお言葉が新鮮でした。マーカーとなるような遺伝子の多型について、バリデーションの検体数を増やしていくと優位な差がでなくなるケースがあるそうですが、これに、被験者の生活習慣データをいれて統計解析すると、たとえば、肥満遺伝子を持っているひとがたくさん食べるとかならず太るというような結果が統計的にえられるということです。ですので、いろいろな生活習慣病のマーカー候補と生活習慣の要素とをいっしょにデータ化して統計解析することで、予防のための指針も出てくるということです。もうひとつは、生活習慣病の早期診断マーカーのバリデーションを行うときにも、ただむやみに検体数を増やすのではなく、臨床情報や生活習慣や時間軸の情報を考慮しながら行うのがよいということがよく理解できました。裏返しで考えると、生活習慣病の早期診断マーカーをバリデーションしていく場合に、ある程度の検体数で優位にでるのであれば、りっぱな診断薬と予防方法を見つける可能性が高いということがわかりました。これが、まさに個別化医療というものの実態だと思いました。
 このお話を聞いたときは、non-codingのセミナーで提唱されていたmicroRNAが細胞全体のダイナミズムを”押さえている”というアイデアを思い出しました。細胞は思った以上に静かなんだな と わたしは理解したのですが、生活習慣や加齢などで、外からの刺激や内からの刺激で、それに対応するために細胞内のRNA蛋白質が働くのでしょう。そして、そこで消費された物質を補給するために、mRNAや蛋白質の発現を促進したり、抑制したりするのではないかと思うように、一昨日からなりました。つまり、細胞のやるべき仕事に直接従事する物質群と、それらを作り出して補給するための物質群、さらに、レギュレーションを行うための発現量は少ないけれど多種類あるmicroRNAや小さなペプチド群の3種類。(少し行き過ぎているのかもしれませんが、素人の妄想ということでお許しください。)そこで、わたしたちのゲノムには、いたるところに多型があるわけですが、決定的な多型にはしない機構がたくさんあるんだと思います。しかしながら、やはり個体ごとに弱いところがでてくるわけで、そとからの飲酒や喫煙や食べすぎなどの刺激で、弱いところから細胞内の平衡状態がくずれ、それを無理にたてなおすために正常とは異なる平衡状態に移行してしまうというイメージなのかなと勝ってに考えてみました。
 ゲノムに責任があるというより、生活習慣に責任があるというのは、当たり前の話なのですが、遺伝子診断や遺伝子治療が今後進んでいくとするならば、”ゲノムで病気になるかならないかが決まるのではなく、病気は生活習慣で発症する”という基本的な概念は、共有化すべき重要な考え方であると思いました。

1日間ではありましたが、いろいろと勉強させていただきました。
発表された先生方、また、会を主催・運営された方々に厚く御礼申し上げます。