「non-codingRNAの機能解析とその応用」というセミナーにいってきました。

日時:2006年10月3日
場所:全共連ビル本館(4F)
主催:ダイアローグ株式会社

多種類のmicroRNAが発現し、細胞内のルームキーピングの役割を果たしている

 いくつかの発表に中で、もっとも感動したのは、microRNAの数の話でした。わたしの理解が間違っているかもしれませんが、microRNAの種類として最低でも2万種類はあるだろう、おそらく、5万種類というのがいい線だ という論文が出たそうで、さらに、microRNAの配列の内、3'側のたかが7merでターゲットのmRNAが決まるそうです。それで見積もると1microRNAがターゲットにするmRNAは、約100種類程度になるということなんですが、つまり、細胞内で、多くの種類のmicroRNAが発現していて、それらが常時細胞の中のシステムを”押さえている”状態、ルームキーピングを行っている実態なのではないかという話です。
 その話から、新しい概念が生まれる可能性があります。mRNAが転写されて、核外に輸送され、リボゾームへいって蛋白質が合成されるという経路が常時早いターンラウンドで動いているのではなくて、一定量のmRNAが細胞質にある状態で、一定の量のmicroRNAが発現していて(おそらく、微量のmicroRNAがたくさんの種類発現している状態で)、microRNAがmRNAから蛋白質にいくところで一定の抑制をかけているのが定常状態、つまり、細胞は”静かな状態”が通常の状態であって、なにか、刺激が入った場合の早い反応も案外静かで、microRNAそのものへの働きかけで(新たにmicroRNAが転写されるということではなく)、少しだけ蛋白質の合成を促進したり、抑えたりする機構が動くというアイデアが考えられるというわけです。
 このアイデアは、素人のわたしが、これまでいろいろな先生の話を聞いて疑問に思っていることを解決してくれます。たとえば、転写産物の中に、スプライシングされたイントロンの切れ端のようなものが、そう多く入ってこないこと(これは転写配列をシーケンシングする手法上そうなるようになっているのかもしれませんが)、ゲノムの転写や核外輸送や蛋白質合成というのは、たいへんエネルギーがいるように思われて、これを常時行っているというのは”エネルギーを消費しておなかがすきそう”ということ、細胞というのは”ある平衡状態にある”のだろうと思ったのですが、それが具体的にはどういうことであるのかアイデアがなかったこと、等々です。
 ところで、生物が進化するとともに、イントロンが拡大してきたことについて、進化の歴史はnon-codingRNAを作ってきた歴史ではないかとRNAワールドの先生がお話されていました。

mRNAタイプのnon-codingRNAは、短いペプチドを合成してる

 もうひとつ面白かったのは、mRNAタイプのnon-codingRNAから、短いペプチドが合成されているという報告があるので、もし、それがmRNAタイプのnon-codingRNA全般がそうであるのならば、たくさんの種類のペプチドが生体内に存在していて、それらが重要な役割をしているという、またもや、常識をひっくりがえすアイデアでした。

non-codingRNAについて、いろいろと勉強させていただきました。
発表された先生方、また、会を主催・運営された方々に厚く御礼申し上げます。